川沿いの適度に舗装された車道を10分くらい走り小道に入ってまた5分ほど愛車を走らせる。
町工場が並ぶ一画にあるライブハウス"Aqua"。
その前でおじいちゃんからもらったHONDA MAGNA50を停車させる。
ピアノの鍵盤のキーチェーンがついた鍵を抜き中へ入る。
「おう、ウィルか、テストとやらは終わったのか」
「はい、今日終わりました」
Aquaの店長マツさん。
今日まで高校の1学期中間テストだった。
私立高校2年生。学校では普通の女子高生をしている。
「ウィル、前にも言ったがもう笑ってもいいんだぞ」
「わかってます」
中学生の時からここに出入りしていた私には高校生になるまでルールが課されていた。
"笑ってはいけない"
年末のバラエティさながら笑ってはいけなかったのだ。
「ウィル、コロナちょーだい」
今日ライブ予定のナナオがビールを注文する。
「ライムないからなしでもいい?」
「そりゃいいわけないだろ」
ガチャ
最近バイトに入ったミツが買い物から帰ってきた。
「ミツ、ライム買ってきた?」
「はい買ってきました」
「よしっ」
ナナオが喜ぶ。