WeddingChristmas

風呂から上がると、日常が混ざった非日常が広がっていた。
綺麗な夜景に愛おしいお嫁さん。
まだ俺が風呂から出たことに気がつかない初の、幸せだったなぁ……と心にしまいきれていない気持ちが俺の耳に届く。
ベッドに腰掛けながら、月明かりに照らしながらうっとりと指輪を見つめている。
いつもと違うホテルの部屋着に、いつもと同じ髪型。
いつもと違う俺たちの関係性。初とは恋人じゃなくて夫婦になったこと。これからの人生を添い遂げる、俺が守るべき愛しい人。
明後日からは学校。1ヶ月経ったら冬休み。
冬休みには新婚旅行。
この俺がわくわくして、うきうきまでしている。変わったよなー、俺も。
「初」
「あ、紺くん」
うわー、超可愛い。
ただ振り向いて俺を見て、名前を呼んだ。ただそれだけ。
今までに何度もあった行動なのに、未だに慣れることが出来ない。
お姫様抱っことか、自分から向かうハグとか、そういう俺からやる行動はもう慣れたのに。
初の可愛すぎる行動には未だに慣れることが出来ない。
それでも、いつも通りを装って初の隣に座る。
「俺と結婚してくれてありがとう」
「こちらこそです。紺くん、私と結婚してくれてありがとうございます」
まだ夢みたい、なんてまた目線を指輪に戻したその手を握った。
温かくて柔らかい、俺よりも小さい初の手。
薬指には同じ結婚指輪が輝いている。
愛の印。俺たちが夫婦だっていう証明。
手を繋いだまま、夜景を眺めて結婚式のことを語り尽くす。
気付いた時にはもう、日を回る直前だった。
余韻が抜けないままベッドで寝転がって向かい合う。
2回目の2人での宿泊は1つの大きなダブルベッド。
こっちを見ている初は、俺の腕枕に頭を預けている。
「新婚旅行、どこ行こっか」
「え!紺くんはどこか行きたいとこないんですか?」
「俺は初の行きたいところに行きたいの」
海外でテンション爆上がりな初もみたいし、日本でご当地グルメを美味しそうに頬張る初もみたい。
まぁ、結婚したんだからこれから何年何十年かけてでも連れて行けばいいんだけど。
「じゃあ私、紺くんと京都に行きたいです!」
京都か。……最高かも。
「紺くんと着物着て、腕とか、組んじゃったりして……」
なんだ、考えることは一緒だ。
「いいね。京都行こっか」
初の着物姿。絶対可愛いよな。2年前の夏祭りの浴衣でさえも似合っていた覚えがある。
「着物着てくれるんですか!!」
食い気味に身体ごと俺の方へ少し寄せて聞いてくる。可愛すぎる。なんならもう、このまま抱きしめたい。
「着るよ。当たり前じゃん」
2人で着物着て写真撮りたいし。なんなら玄関に飾っておきたいし。
……溺愛だなぁ、俺。
「紺くん、大好きです」
俺の気持ちも知らずに嬉しそうに愛を伝えてくる。
そんなことをされたらもう、我慢できない。
自由な左手で初の腕を引っ張って思いっきり抱きしめた。
「こっ、紺くんっ!?いきなりどうしたんですか!」
どうしたのかって……。
「大好きだなぁって思っただけ」
「……紺くん、改めて私と結婚してくれてありがとうございます」
俺の背中に手を回しながらそんなこと言うから。
「初、愛してるよ」
顔が見れないことをいいことに、耳元で。
これから数え切れないほど口にするであろう、愛してるの言葉を囁いた。