WeddingChristmas

結婚の挨拶を済ませた数日後。
甘くて幸せな時間はどんどん加速して進んでいって、とうとう結婚式当日になった。
「本当に私たち、結婚するんですね!」
嬉しそうに話している初は純白のドレスに身を包んでくるっと一周してみせた。
「当たり前じゃん。初の両親にも幸せにしますって挨拶してきちゃったし」
俺もこの日をずっとずっと待ち望んでいたわけだし。
「それにしても紺くん、かっこよすぎませんか……?」
「まぁ初の横に立つならこれくらいかっこよくないと」
ピシッと決めたタキシードは、初がセレクトしてお互い納得したものだ。
今まで何度か着てきたものより特別感のある、今日のための、人生最大のライフイベントのためのもの。
あー、可愛い。
牛若を愛でる七海じゃないけど、あの気持ちもよく分かってしまう。
天使だわ。俺の初。世界一。比べ物にならないくらいに可愛すぎる。
もう金とかどうでもいいわ、初がいるなら。
金とスペックは裏切らない。
そんな俺のモットー。
いつしか初を守って幸せにすることに変わっていた。
もちろんそれも必要だけど。でもそれは初の笑顔を沢山見るためであって、初との時間を大事にしたい。
今思い返すと、入学当初から大きく変わったなと自分でも思う。
「新郎新婦様、そろそろお時間です」
ノックとともに聞こえてくるスタッフさんの声。
一旦お別れだ。
こんなにも別れ難いなんて、この一瞬でさえ離れたくないなんて、どんだけ初のこと好きなんだよ、俺。
「じゃあ、あっちで」
「はい!……その前に、ちょっとだけ……」
小走りで近づいてきたかと思ったら、ぎゅっと抱きつかれる。
「初?」
「すいません、紺くんかっこよすぎて我慢できませんでした」
もう離れますねって、すぐに解かれた腕。
それを引っ張って強く抱き締めた。
仕方ないだろう。こんなに可愛いことをされたら俺も抑えられなくなる。
「じゃあ、先行く」
そろそろ行かないと本当にやばいな、と抱きしめた腕を緩めた。
相変わらず照れ屋な初に手を振り、1人でチャペルの扉の前に立つ。
11月22日。いい夫婦の日。
そんな俺の誕生日は、今日から結婚記念日になる。
1年の頃は自分よりも初のが盛り上がっていた。
朝からのクラッカーも、失敗してしまっていたケーキも今では大切な思い出。
いきなりだった学園長からのゲームで手に入れた薔薇。
12本の薔薇の花束を手渡したときにはきっともう、自分が思っている好きの気持ちの何倍も何十倍も、初のことが好きだったんだろう。
2年。学園祭の人気投票の賞品で貰ったチケットで夜の貸切遊園地。
これを勝ち取れたのは、俺の事を理解して、大事にしてくれる初がいたからだ。
スーパー彼女。この言葉が似合うのは初くらいしか居ないだろう。
そんなスーパー彼女からのプロポーズ。
確信した時は嬉しさと愛おしさで初と顔を合わせると柄にもなくそわそわした気持ちも、隠しながら照れているこの表情も溢れ出てしまいそうだった。
こんな俺、入学当初の自分が見てたら有り得ないって思うんだろうな。
初のことを真面目で面倒臭いって思っていた自分がバカみたいだ。
3年目の今は自慢の彼女。いや、自慢のお嫁さん。
幸せだなとしみじみと感じながら、左右に大きく開かれた扉の中へと足を踏み入れる。
レッドカーペットの上を一歩ずつ歩いていくごとに、七海学園で知り合った友人が目に入る。
岩清水と戸亀、宇貝と星出。七海と牛若、あゆかじ。学園長の七海夫婦まで。
いい人たちだよな。
梶は指輪を買いに行く時も付き合ってくれた。
七海はなんだかんだ初のことを信頼して、大事にしてくれている。
もちろん初は俺のお嫁さんだから、気に入らないところもあるけど。それでも初を大切に思ってくれている人が多いのは嬉しい。
それもこれも、初の人柄が集めたんだけど。
「続いて新婦様のご入場です」
スタッフさんの一言でゆったりとした優しい音楽がかかる。
初、緊張して転けそうだなー。
ゆまおばさんと2人で俺の方へと歩いてくる初。
そういえば、ジューンブライドの時期にあったヴェールのゲームは宇貝が初とペアになりたくて来たとかトレードを申請されたりとかして参加出来なかったな。
でもこんなに綺麗なんだ、あのときでも一回見たらすぐに分かったんだろう。
目の前まで来た初の手を取って、正面を向く。
人の良さそうな牧師と目が合ったかと思うと、次へ次へとプログラムが進んでいく。
病める時も健やかなる時も、というベタな言葉も今となってはものすごく大切な言葉に聞こえるし、初の発する誓いますの言葉は俺の胸にものすごく響いた。
2人で選んだ結婚指輪をお互いに付けて、既に泣きそうな初。……かわい。
牧師に言われるがままベールアップをすると幸せそうな初の顔がはっきり見えた。
そしてそのまま、結婚式対決のときには出来なかった、好きの気持ちを込めた誓いのキス。
幸せをしっかり噛み締めながら一つ一つの流れをこなしていく。
披露宴で出てきたウェディングケーキは思ったより小さかった。
初のことだから、自分たちの形をしたメレンゲドールを乗せた、大きなケーキを選んだものだと思っていたのに。
ちょっといい家の人がクリスマスに家で食べるような、小さめの2段ケーキに均等な数のいちごというなんともシンプルなものだった。
それでも幸せそうに、頬にクリームをつけながら食べる初が愛らしくて仕方ない。
人生一幸せな食事を終えたら、初にとってはものすごく大切な、両親へ向けた手紙。
サプライズで用意した、俺から初への手紙。
温かい涙が、愛のこもった一言一言が、会場を更に明るくした。