「紹介するね。ゆまおばさん」
緊張気味の初が俺の前に座る女性、ゆまおばさんに話しかけるのを珍しく緊張しながら聞く。
「この人が私のこっ、こっ、婚約者の!紺くんです」
顔を真っ赤にしながら必死で話している初が可愛くて、思わず頬が緩んでしまう。
「はじめまして。鮫上紺です。初……倉下さんと結婚を前提にお付き合いさせていただいています」
俺が言うと、初は嬉しそうに真っ赤な頬を両手で包んでニコニコしている。
この後は初の両親に挨拶。
一度、夏祭りの日に初と来たあの日以来だ。
「ママ、パパ、私ね、結婚するんだ。前も来てくれた、紺くんと」
あの頃より少し大人になった口調で話すのは、緊張しているからだろうか。
「私出会ったよ。ママとパパと同じくらい、大切で大好きな人。これからもずっと、ずっとずっと一緒に居たいって思える人と。だからもう、心配しないでね」
微笑んで話す初を見ていると、話し終えたのかバチッと目が合った。
次、紺くんの番だよ?と言うように、俺と両親へと視線を行き来させる。
そんな事しなくても、分かってるよ。
俺も、ちゃんと話しに来たんだ。
「お義母さん、お義父さん、ご無沙汰しています。約束通り、初を本当のお嫁さんにします。11月22日に結婚式をするので、見守っていてください。絶対、初を幸せにします」
これから何度も話す、大好きな初の、大好きな両親。
これからは俺のお義母さんとお義父さんだ。
少し4人で話したあと、初が俺の手をそっと握った。
「じゃあ、また来るね。紺くんも一緒に」
「うん。また来ます」
取り替えた古い花を手に、のんびり寮へと帰った。