ーカランカラン


「…いらっしゃいませ。」


ここは、路地裏の裏バー"GLAY(グレー)"


色んな情報と人が溢れる場所。


私の行きつけだ。


薄暗い店内を迷いなく歩き、お決まりのカウンターに腰掛ける。


そして。


足を組む頃、


目の前には丸刈りのマスター。


「いらっしゃい嬢ちゃん。今日もよく来たな。」


そう言いこの店には似合わぬニカッとした笑顔を浮かべ、私のお気に入りをテーブルに置く。


「…ありがとう。」


これがいつもの流れ。


別に、私とマスターは特別親しい訳じゃないし、これといった会話もしない。


だけど。


"あの日"から私は、毎晩のようにGLAYに入り浸るようになった。


だってここには、私を知る者はいない。


誰もが"本当の私"ではなく"もう1人の私"を見てる。


それが私には救いだった。