「これで、卒業式を終わります」
私たちはこの瞬間、この高校を卒業した。
みんなが外に集まって、写真を撮っている中、私は一人、屋上に向かった。
「…先生」
「…卒業おめでとう」
この二年間、ずっと会いたかった、大好きな人が、目の前に立っていた。
嬉しくて、勝手に涙が溢れてくる。
「いお…おいで」
先生に言われて、歩み寄ると先生は、そっと抱きしめてくれた。
「会いたかった」
「私も…先生にずっと会いたかったです」
「もう…先生じゃないけどね」
「……優君」
はじめて私が名前を呼ぶと、優くんは少し驚いていたけど、嬉しそうに言った。
「うん、何?」
私は、優くんから手紙をもらってからずっと、先生に言いたいことがあった。
だから言ったんだ。
「…優君と出会えて良かったです。
大好きです」
大好きでしたではなく、
今も好きということを伝えたかったから。
「うん、知ってる」
優君は話してる間、ずっと私を優しく包み込んでくれた。
「優くん、聞いてもいいですか?」
「何?」
そう言って、優くんは私から離れた。
「もし私が、手紙を読んでいなかったら…
どうしたんですか?」
「…探し出すよ…。
いおがどこに行っても、
絶対に見つけ出してたよ」
そう言って、私の涙をそっと拭ってくれた。
こんなこと、言ってもらえると思っていなかったから、嬉しくてまた涙が溢れた。
泣きたいわけじゃないのに、涙を止められなかった。
「この涙、他の男に見せないでね」
「…優くんって、本当に嫉妬深いんですね」
「そうだよ。手紙でも、書いてたでしょ?」
そう言って笑い合う。
こんな日がこれから続いて欲しい。
そして、ずっと優くんの隣で笑っていたい。
何があっても、もう優くんから離れたくない。
「帰ろっか」
そう言って、優くんはそっと私の手を握った。
その温かさは、今までと何も変わらない。
初めて優くんに、腕を引かれた日と。
私の隣に優くんがいて、
優くんの隣には私がいる。
そして、
私の中に、そっと閉まっておいた
思い出の続きを
大好きな人とこれから作り上げていく。
これから先、何年経っても
一緒に笑っていられることを信じて。