(いお、今日も学校休み?)
日向から、何通も連絡が来ていた。
春休みが終わり、寮に帰ったものの、学校には行く気になれず、一週間学校を休んでいた。
(ごめんね)
私は一言だけ返して、携帯の電源を切った。
「いお、今日も学校休むの?」
「…うん」
「だったら、私も今日は休もうかな」
「え…?」
「聞くよ、話。
誰かに話せば、楽になると思うよ?」
「…莉乃」
その言葉に、
私の中で何か熱いものが込み上げてくる。
そして、それは一気に頬を伝う。
こんなこと話しても、先生は戻ってこない。
どうにもならないから、自分の中で処理しようと、ずっと抱え込んでいた。
でも、私はずっと誰かに、
話したかったのかもしれない。
何か言って欲しいとかじゃなくて、
ただ…誰かに話したかったんだと思う。
…話して、楽になりたかった。
「…何があったの?
…ゆっくりでいいから」
莉乃はそう言って、
私の手をそっと握ってくれた。
莉乃は、私を落ち着かせてくれるような、
優しい口調だった。
莉乃の優しさに甘えて、全て話した。
終業式であった出来事を。
「…気持ちは伝えられたの?」
「最後に言えたよ。
…大好きでしたって」
「そっか…
よく頑張ったね」
そう言って、抱きしめてくれた。
莉乃の優しさに、幾度となく涙が溢れた。
先生がいなくなってから、
心にポッカリと穴が空いたようで、
誰かのぬくもりに触れていなかった。
だから、莉乃のぬくもりが、
私を安心させてくれた。
私は、一人じゃないって
言ってくれたようだった。
「…莉乃、ありがとう」
きっと、これからも先生のことは忘れない。
忘れられないと思う。
私の思い出として、残っているから。
私は、これからもずっと
思い出に縋っているかもしれない。
時間が経てば忘れられる。
そうやって、何度も自分の中で
言い聞かせてきたけど、そうじゃない。
どんなに時間が経っても、
きっとまた思い出す。
もう戻ってこない先生との思い出を。
それでも、私は前に進まないといけない。
どんなに辛くても、
苦しくても、
私は一人じゃないから。