あれから、もう一ヶ月が経った。




もうすぐテストで、テストが終われば、
春休みみたいなものだった。





つまり、もうすぐ一年生が終わる。





「いお、先生と話してないの?」





「…うん」






先生は一度も、私に話しかけなかった。

部活でも私ではなく、
近くにいる生徒に頼み事をしていた。





他の生徒と笑っている姿を見るたび、
その生徒が羨ましかった。







もう、諦めようって、何度も思った。








でも気づけば先生を目で追って、
良いことがあれば、
それを先生に伝えたくて、
いつも先生のことで頭がいっぱいで。






諦めようと思えば思うほど、








苦しかった。







「来週テストしたら、
もう休みで会えなくなるよ?」






「…うん。でも、先生は多分、
私と話したくないんだと思う」







「どうして?」


 


「…もういいんだ。




私は、大丈夫だから」
    






「…そっか。じゃあ、また明日ね」





日向はそれだけ言って教室を出た。






「…いお」





「…翔太…どうしたの?」





そう言って、笑顔を作って誤魔化す。

    




こうやって無理して笑って、今、自分がどうしたいのかも、分からないままだった。






ずっとそう思っていたけど、
  





実際はそうじゃなくて、








分かっているのに、
私は目の前のことに向き合わなかった。
 




「…無理すんなよ」




「うん…ありがとう」







もう先生は、私に笑顔を向けてくれない。




視界にさえ入れてくれない。








私はただ…








…先生と話したいだけなのに。





こんなに苦しいなら、
自分の気持ちを全部捨てて、逃げたくなる。





もう逃げたくないのに、





みんなが優しいから、
それに甘えようとしてしまう。








私は、そんな自分が大嫌いだった。