「いお、準備できた?」



「待って、あと少し」




莉乃が、少しでも一緒に祭りに行きたいと言うので、準備していた。




「ごめん、お待たせ」



「行こ!」


花火は一緒に見れないけど、
一緒に祭りに行けてよかったと思う。



美味しいものを食べて、写真を撮って、本当に楽しかった。

途中、翔太や日向、それに伊月くん、皐月ちゃんにも会った。



だから、時間はあっという間に過ぎた。




「じゃあ、私そろそろ行くね」




「うん、頑張ってね」





先生と花火を見る。






そのことは、誰にも言わなかったけど、
莉乃は勘づいていたと思う。






「…ありがとう」




莉乃に手を振って、
そのまま学校に向かった。





夏休みだから、
学校は閉まっていると思っていた。




でも、先生がいたから、
少しだけ門が開けられていた。




急足で誰にもバレないように、
屋上に向かった。






「いお…?」





「!?…先生?」




屋上に行こうと階段を上っていた時に、後ろから声をかけられて、驚いたけど、振り返ると先生が立っていた。





「…来たんだ」





そう言う先生の表情は、
あまり嬉しそうではなかった。




「…ごめんなさい。



迷惑なら…帰ります」







「迷惑じゃないよ。





ただ…



本当に来ると思わなかったから」





さっきとは違って、
本当に迷惑ではなさそうな表情をしていた。





だから、先生が今どう思っているのかが、
全然分からなかった。






「…一緒に見よ?花火」





「はい」





誰もいない学校で、二人で会うのは初めてのはずなのに、屋上に行けば、何も変わらない気がした。




屋上では、いつも先生と二人だったから。




でも、行ってみると全然違った。



夜の屋上は、とても綺麗だった。





あまりはっきり見えない先生の顔。



でも、花火が上がるとその光で照らされる。






その横顔は、とても綺麗だった。






「綺麗だね」




花火が上がっている方を向きながら、
先生は独り言のように言う。






初めて好きな人と見る花火は、
いつもより綺麗だった。





「いお、









………だよ」






私は、花火の音で先生が言っていることを聞き取ることができなかった。



そもそも、先生が私に何か、伝えようとしたことすら、知らないで、ただ夢中で花火を見ていた。






先生が私の方を向いて、
辛そうにしていたことも知らずに。