「先生、おはようございます」
「おはよう」
挨拶から始まる一日。
朝、校門には先生が立っていて、
生徒に挨拶をしていた。
先生と話したかったけど、
他の生徒がたくさんいたから、
諦めて、そのまま教室に向かった。
それでも、やっぱり先生と話したい。
そう思った時には、私は屋上に来ていた。
先生に会えるかなんて分からないけど、
もしかしたら、会えるかもしれない、
なんて少し期待した。
でも結局、先生は来なかった。
教室に戻ると、
すぐに日向ちゃんが、声をかけてきた。
「いおちゃん、おはよう」
「おはよう。あ、いおでいいよ」
「分かった。なら私は日向で」
「うん。改めてよろしく、日向」
「よろしくね、いお」
握手を交わし、それぞれの席に着く。
今日から授業が始まる。
どの先生がどの教科なのか、
入学式で言われたけど、
ほとんど覚えていなかった。
でも、これだけは覚えていた。
「一年生、英語の先生は、
柴咲先生、緑川先生です」
先生か、担任の緑川先生。
正直、どっちの先生になるかは分からない。
でも、私は先生である事を願った。
すると、
緑川先生と柴咲先生が教室に入ってきた。
「英語の時間は、
クラスを半分に分けて、授業をします。
今から名前を呼ばれた人は、
柴咲先生と教室を移動してください」
呼ばれなきゃ、先生の授業は受けられない。
お願い。
そう願っても、結果は変わらない。
私の名前は、呼ばれなかった。
名前を呼ばれた生徒は、
先生と一緒に教室を出ていく。
先生の姿が見えなくなるのが、
こんなにも嫌だと思ったのは、初めてだった。
上と下のクラスで分けられた英語。
先生の方は上のクラス。
だから、私がいる緑川先生の方は下のクラス。
「定期テストでいい点数を取れば、
上のクラスにも行けるので、
頑張ってくださいね」
そう言われて、
私は、勉強はあまり得意じゃないけど、
英語だけは頑張らないとって思った。
先生のいる方に行きたいから。
先生と少しでも長く、
一緒にいたいから。
それに、
私が先生の知らないことを他の生徒が知る。
それが嫌だったから。
だから、
私は絶対に先生のいる上のクラスに行く。
先生、待ってて。
私、頑張るから。
