僕は遥のマネをしてお祈りポーズをした。

「わっ! 私、またこうなっちゃってた?  見つけて欲しくて願っていたの。多分わたし、強く願っている時、こうなっちゃうのかな?」

 人によって違うと思うんだけど、お願いのポーズって、左手の指、右手の指、左手の指……って感じで左右の指1本ずつ交互に絡ませて手をギュッとする。けれど遥は、右手4本、左手4本の指をピッタリそれぞれくっつけたまま組む。そして、小指が立っていた。

 今、遥は強く願っていたのか……。
 きっと見つけてくれるか不安だったのかな?

 見つけてよかった。
 遥を不安な気持ちにさせたくないから。

 それにしても、強く願っている時だけ?

 確かに小さい頃ジャンケンをした時とかも、遥は勝ちますようにって、お祈りのポーズをしていたけれど、小指は立ててなかった、と思う。

 でも一度だけ見た。
 
 僕達が離れてしまうことになって「また一緒に過ごせますように」って星に願いごとを一緒にした小学5年生の時。
 
 お願いしている最中に横目でちらっと彼女を見ると、今日と同じポーズをしていた。

 遥も離れるのが本気で嫌だったのかな?
 そんなことを考えていると遥は言った。

「はるちゃんって呼んでもらえて、嬉しかった」

 嬉しかったんだ……。
 満面な笑みまで見せてくれた。

 そんなことで嬉しいなんて……何回でも呼びたくなる。何回でも呼ぶよ?

「じゃ、そう呼ぶ。は、はるちゃんも、翼って呼んでいいから」

「はるちゃん」って改めて呼ぶのが緊張して、ぎこちない話し方になった。

「翼って呼んでいいの? 翼!」

 再会した時、冷たくして「翼って呼び捨てしないで」って内容のことを言ってしまった。言ったのは自分なのに、ずっと名字で呼ばれることにモヤモヤしていた。

 名前を呼ばれると、懐かしい気持ちと共に、嬉しさが込み上げてきた。