オージさまはマテができない



 という私の期待を大きく裏切り、翌日のお昼休みにもワンコ王子は現れた。


「春を呼ぶ恋愛神さま、ここではどういう話をすればいいの?」


 どうやら私とのお喋りをお気に召してくれたらしい。チョコレートの箱を献上した羽地くんは、今日は私の前の席に腰を下ろしている。

 ちなみに羽地央治が私のところを訪れたというビッグニュースは最大風速百メートルで学校中を駆け巡ったらしい。一年生の文化部女子から三年生の運動部男子までにたった一瞬で行き渡ったわけである。

 吉木春呼のところに来た、それすなわち「羽地央治には好きな子がいる、しかも告白の予定がある」という完璧な理論が誰でも簡単に組み立てられる。

 そんなのって私なら耐えられないほど恥ずかしいし人気者も苦労するなあと気の毒に思っていたのだが、みんなの注目に臆することなく今日も昼休みの後半になると羽地くんは現れた。


「知らない。なんか私に話すとうまくいくらしいから、神社でお参りしていくみたいな感じでいいんじゃない?」

「なんでも話していいの?」

「まあ、聞いている私が不愉快にならない話なら何でもいいよ」


 チョコレート一箱分くらいは相手にしてあげないといけないので、私は見飽きることのない綺麗な顔をぽわんと眺めながら話を聞き流すことにした。

 この人、大きな二重まぶたとかぷっくりした桜色の唇に視線を奪われがちだけど、鼻筋も通っているし肌もとぅるとぅるなんだよな。柔らかそうな平行眉毛の角度がちょっと困って見えるのもかわいい。

 何よりくるくる変わる表情がどれもかわいいので永遠に見ていたい。これって母性?


「吉木さんって、いつもひとりでお弁当たべてんの?」