耳を熱くする私をわらった彼は、にまにまと意地悪な笑みを浮かべながら覗き込んでくる。
「僕が一方的みたいだけど、ところで春ちゃんはどうなの? ねえ、どうなの?」
「かわいいとは思ってるよ」
「僕に嫌われたら悲しい?」
「うん、想像するだけで悲しいよ」
こんなに懐いてくれている可愛い犬に噛みつかれたら、私はひっそり泣くだろう。不愉快な想像を振り払って、わざとさっぱり言ってみた。
「でも、たまに愛が重いのは確か」
「うーん、重すぎ?」
「先に重たくしたのはオージくんだから責任を取るべきだな。減っていくのは恐ろしいから、ずっと重いままでいてほしい」
高濃度な本音を孕んでいたことに気付いたオージくんは目を細めて破顔した。それから大袈裟に神妙な面持ちで助言する。
「自分に願っておいたほうがいいんじゃない? 成就するってよく聞くし、僕も実際に成就したからお勧めだよ」
「クチコミありがとう、高評価しておいてね」
「それはできないよ、だって春呼頼みがもっと人気になったら僕との時間がとれなくて困るでしょ」
ありったけの愛を惜しみなく注いでくれるので、いちおう恥ずかしがってはみせるものの。単純な私はいとも容易く喜ばされてしまうのだ。
「ありがとう、オージくんといると癒される」
「いーえ、よかったー」
「私にもできることあれば言ってね、できるか分かんないけど頑張るし」
「基本的に俺はしてもらうよりしてあげたい側だから構わないんだけど、いつか春ちゃんに頑張ってほしいことがあったらよろしく頼むね」
そう言いながら、待てができないオージくんの右手が宙ぶらりんだった私の左手をきゅっと捕らえた。そのまま柔らかく繋がれて、すべすべの肌感から甘い体温が伝わってきた。
その手に私から力を込めることはしなかったけど、帰り道の間ずっと振り解くこともしなかった。



