おかしいな、目を擦って錯覚を振り払う。


「念の為言っておくけどうまくいかな、いや、なんでもない」

「ん?」

「んーん、うまくいかないこともあるよって言おうとしたけど、羽地くんなら私がいなくても余裕で成功するのでは?と思っただけ。大丈夫、あなたさまなら失敗しないわ」


 お決まりの前口上を述べようとしたのだが、この美少年からの告白を断る女の子って想像もつかないので途中で言葉を取り消した。

 すると、嬉しそうに見えない尻尾を振りながら尋ねてくる。
 彼はわかりやすく浮かれており、語尾が跳ねていた。


「そうかな? 吉木さん、そう思う?」

「てか、羽地くんって彼女いないんだね。かっこいいから他校とか歳上とかと付き合ってると思ってた」

「え! ぜんぜんだよ、モテないし」

「いやいやいや、王子様が何を仰る」

「オージって名前なだけでしょ」

「地元、八王子?」

「そのつまんないの、め〜っちゃ言われるけど違います」


 下唇を突き出して挑発してくる羽地くんは、異次元に整った顔立ちをしているとどんな表情でも無条件にかわいくなってしまうという仮定を証明していた。

 モテるはずだわ、こんなの。

 ちなみに、うちに来た女の子の告白でこれまでに成就しなかった告白のほとんどが相手が羽地央慈だった場合である。

 つまりうちの成就率という信頼を下げているのは彼なので、迷惑料?みたいなのを支払ってもらいたいくらいだ。

 相手にしたらなんのこっちゃだろうけど。