オージさまはマテができない



 一つ目の問題を解消したので、私は次なる問題に立ち向かうことにしながら自分の教室に戻っていた。遠くでは吹奏楽部が練習する音、近くではバスケ部が練習する声が聞こえている。


 けっきょくリカちゃんには、私がオージくんと付き合うことになったと伝えることができなかった。二人の世界に没入していたという原因もあるが、後ろめたさを感じた私が消極的だったという原因が大きい。

 どうするのが正解だったのだろう。正解ばかりを選ぶ天才ってたまにいるけど、私は自分の選択が正解かどうかさえ分からない凡人だ。
 

 というか、そもそも私はオージくんと付き合うことを公言する必要はないはずである。しなくていい。しない。することのメリットが何もない。

 自分を卑下するつもりはないが、羽地央慈と吉木春呼ではレベルが釣り合っていないのなんて一目瞭然だ。月とすっぽん、王子と平民である。

 
 とぼとぼと力なく教室の後ろ側にあるドアを開けて足を踏み入れると、わらわらと人集ひとだかりができていた。その中心地となる私の席にはふわんふわんの後頭部が見えて、心臓の端っこがぎゅっと絞られた。

 こんなにかわいい人が彼氏なの、自慢したい気持ちもある。なんて濁った欲が湧いてくるけど、同時にオージくんは私なんかが彼女だって知られたら恥ずかしいかもしれないとか考えてしまう。

 私が後ろから席に近寄ると、オージくんよりも先に気付いたまわりのクラスメイトたちが「神さまがおわしますー」「神さまのおなーりー」と囃し立てた。

 ああそうね、それもまた問題点である。リカちゃんの件を終えて、私は恋愛神を引退すると決めていた。