最終的に羽地央慈はめでたく私の彼氏に就任されたわけですが、一安心するにはまだ早い。最終的にと言ったけれど、ここは決して最終ではないのだ。懸念点がいくつも残っている。

 それらを一つずつ片付けていこう。人生とは、自分で撒いた伏線を回収していく作業である。



 まず、その場の雰囲気に酔いしれてオージくんと付き合うことを承諾したが、これってよくよく考えてみると最低最悪の行為なのでは? 私を信頼して相談してくれたリカちゃんからすると、盗賊扱いされてもおかしくないのでは?

 このままだと、私は恋愛神を謳った怪しげな自己利益しか気にしない最低人間に成り下がってしまう。神さまなどと崇められた人間の行末そのものだ。


 居ても立っても居られなくなり、まるい空気が漂うベンチから私だけ勢いよく立ち上がった。オージくんはこちらを見上げ、こてんと首を傾げている。


「ちょっと気になりすぎるから、様子を見てくる」


 無駄に力強く宣言し、追求される間も与えずに私は駆け出した。置き去りにされたオージくんはぽかんとしているが、きみに構っている暇はない。

 先ほどの物陰にはもう三村くんの姿もなく、もちろんお目当てのリカちゃんも見当たらなかった。しかし学校内にいる限り目星はついているので焦る必要はない。

 頼むから三村くん、リカちゃんを引き留めておいてくれ! 拝みながら廊下を走って、可能性がある場所を通りながら目的地へと向かう。普段の運動不足が祟って早くも息が切れてきた。今日はよく走る日だ。

 
「リカちゃんっ!」


 昼休みぶりの体育館裏に到着するや否や、彼女の名前を叫ぶ私はさながらスーパーヒーローのようであった。キマッタ、と自己陶酔している私に冷ややかに送られる視線が二人分。
 

「春呼ちゃん? どうしたの?」

「吉木? 何しにきたの?」


 ぜーはーと膝に手をついて呼吸を整える全力疾走後の私に向かい、並んで座っていたリカちゃんと三村くんが迷惑そうな顔をしている。運動音痴の私なりに頑張ったのだから、もう少しありがたがっていただきたい。