すると、まさかとは思うがこちらの睨みが通じたのか、オージくんがぐわりと雑に前髪を掻き上げながらこちらを振り返った。
とはいっても数メートルの距離があるし、相手からは死角なはず。だから視線が交わっているように感じるのは気の所為なはず。ひとまず胸を撫で下ろそうとしていたところ、ゆったりと大股でオージくんが歩み寄ってきた。
動けなくなった三村くんと顔を向き合わせ、ごくりと唾を飲む。そうしている間にも一歩一歩と不機嫌な王子様が近づいてきて、いよいよ私たちの前で立ち止まった。
「春ちゃん、ちょっといい?」
「ぐえ、」
「あっちのベンチでゆ〜っくり話そ?」
にっこりと薄く微笑むオージくんは冷たい空気を纏っており、我々はぶるり身震いしてしまう。差し出された手を掴むと、そのまま引っ張られるようにベンチのほうに連行された。
つい裏切って、あるいは裏切られて置き去りにしてきた三村くんが気になってしまい振り返ると、「そんなに気になる?」と不愉快を露わにしたオージくんに指摘された。あーもう!
到着したのは中庭のベンチ、そこに半ば無理やり座らされた。無駄な憤怒を浴びたくない平和主義なので素直に腰を下ろした、というのが正しい。
例のジンクスが一瞬だけ脳裏を過ったが、そんなのんびりしている場合ではないので背筋を伸ばした。ムッと不機嫌にしているオージくんだが、いつまでも私の手を離そうとしてくれない。
「春ちゃん、三村くんに振られたくせになんで二人でこそこそしてるの」
「ウワ」
「放課後は春ちゃんと会うって固い約束をしてたから腹を括ってたのに、春ちゃんのクラスに寄ったらみんなが言うんだもん。春ちゃん振られてたよ〜って」
おいこら、クラスメイト!!! 火に油を注いだ謀反者を突き止めるまでクラス替えはさせないぞ。



