オージさまはマテができない



 放課後になると、まず三村くんがやってきた。昼休みはわざわざ人目につかない場所で逢ったというのに、今回は帰りのホームルームが終わるや否や駆け寄ってきたのでみんながちらちらと気にしている。

 私の周りには楽しいネタが転がり込んできやすいので、他人の恋愛を冷やかしたい野次馬たちが注目するのだ。だから私は移動を提案しようとしたのに、


「吉木さん、付き合って!」


 不躾な視線を浴びる三村くんは、周囲の人たちなど気にすることもなく私の手を取って正々堂々と告白してきた。


「はあ?」


 ぽかんと口を開いて間抜けな面をお見舞いする私を置いて、みんながキャッキャと囃し立てる。「え、まじ?」「三村が吉木に告った〜!」「ヒュー付き合っちゃえ!」その不可解な状況をようやく理解した三村くんは、慌てふためいて弁解を始めた。


「あ、えと、ちがくて、」

「ん?」

「付き合ってほしい場所がある、というか、」

「ああ、そういうこと」

「なんかごめん、期待させちゃって」


 いや、まてまて、期待させられてないですけど。どうして私が振られたかんじになってるの、謝られるのもごめんだわ。

 最後の余計な一言がかなり癪に触ったが、怒っても仕方がないのでオクターブを下げた声で相槌を打つ。いいって、わかっているから。

 それを面白がって見ていたクラスメイトたちは慰めるように私の肩をぽんと叩き、容赦なく神経を逆撫でしてくる。

 「吉木、振られてるじゃん」「ドンマイ恋愛神、ジュースでも奢ろっか?」「元気出そ、春呼」私が超能力を持っていたら、今頃、教室ごと爆破していたに違いない。