オージさまはマテができない



 午後の授業を受けている間、お気楽思考な私にしてはかなり難しいことを考えていた。専らオージくんについてである。

 やはり彼には成就させたい恋があるようだ。あまりにも進展が見えないので最近ではかなり疑っていたのだが私のもとに通うということは、それすなわち熱烈に叶えたい恋があるという意味であったらしい。

 なーんだ、友だちじゃないじゃん。成就する効果を高めたくて私のところに通い詰めていたのだとすれば、そんなの友だちになれない。ただの神さまとお参りする人の関係だ。

 そのくせ私には他の人から相談を受けて欲しくないとか、わがままにも程がある。というか、みんなの憧れる王子様なのだから私なんかに絡んでこないでほしい。放っておいてくれたらいいのに。


 どんどん黒く塗りつぶされていく感情の何かを振り払って、別の件に思いを馳せることにした。リカちゃんである。

 リカちゃんは、きっとオージくんに告白する。元気いっぱいな彼女のことだから、最速であれば今日の放課後が決戦の舞台。したがって、そこで二人のハートの矢印が合致してしまえば、もうオージくんは私に用無しとなる。


 うーん、気分が良くないな。窓の外を見ると、お昼休みでは晴れ渡っていたはずの空がすっかり雲に覆われていた。天候が私の心の連動するの、いい加減にしてほしい。


 声には出さないけれど、お腹の奥底の最下層には嫌な本音が沈みこんでいた。リカちゃん、オージくんには振られちゃえばいいのにな。それで三村くんに慰めてもらってさ、そっちで勝手に幸せになってほしい。

 ぼんやりと描いていただけの感情の輪郭をつけてしまったことにより、負の感情が明確な形となってしまった。吉木春呼もいよいよ恋愛神を退任すべき頃なのかもしれない。


 黒板を見上げると、白いチョークで書かれた数字がずらりと並んでいた。まったく頭に入らない数学の公式を眺めながら私は大袈裟に溜息を吐く。

 やれやれ、来週は小テストを行うらしい。