さて、我々は花も恥じらうティーンエイジである。春を求めるのは王子様に限らない。
朝のホームルームが始まるよりも早くに私の机に駆け寄ってきたのはぶんぶん振り回すポニーテールが元気一杯の女の子、リカちゃんだった。
「春呼大先生! だめもとでのご相談に参りました!」
「よしゃ、どんとこい」
「むりって分かってるんだけど、はやく告白しないと後悔しそうだから駆け込んできた次第です!」
差し出されたサイダーを受け取り、そういえば同じ物を初日のオージくんに貰ったなあという無意味な記憶をなぞってしまった。
私のところは『告白前に成就祈願で寄っていく』のが正しい利用方法なので、何度も何度も通い詰める人はいない。そんな人は振られすぎて気の毒だ。
だから、オージくんのことが分からない。本当に、ただシンプルに私とお話がしたいなら、手ぶらで来てくれたっていいのにね。友だちって、そうだから。
「どんな人なの」
「え! 聞いちゃう? す〜ごく格好よくて、かわいいの! 黙っているとクールな王子様なのにたまに赤ちゃんみたいで、友達とはしゃぐときは足をバタバタさせてのけぞってアクロバティックに笑うところとか最高で〜!」
桃色の夢の方角を見つめながら延々と語っているリカちゃんを横目に、私は朝からすでにお疲れ気味の目頭を揉んだ。
彼女の意中の人がやけにオージくんと重なっているように思われるのは、不意にさっき彼のことを考えていたせいだろうか。「へえ、いいね」と空っぽの相槌を打ちながら、嫌な予感に背筋を震わせる。
「でもね、好きな人がいるっぽいの」
「そうなんだ、彼女ではない?」
「まだ付き合ってはないと思う。だって、春呼ちゃんのところによく来ている人だから」
私のところに来た人ならば、すでに彼女がいる可能性が高い。しかし、よく来ている人ならば話はかなり違ってくる。



