「うぅっ…ぐずっ……」

夜に吹く風が冷たい。
でもそんなことどうでもいいくらい私はただひたすら泣いていた。

大好きなおばあちゃんが亡くなった。
今日はお葬式である。
優しさで溢れていたおばあちゃんは家族からはもちろんたくさんの人から愛されていた。

『優香の元気な笑顔がおばあちゃんは大好きよ。』

その言葉が頭の中に残っていておばあちゃんは私の泣く顔より笑顔が見たいはず
その意識が強いせいか家族の前では泣けなかった。

だから今こうして外に出て泣いているのだ。

「おばあちゃぁん…会いたいよ…」


「…あの、大丈夫ですか?」

頭上から男の子の声が聞こえた。
びっくりして見上げるとそこにはびっくりするほどの美少年

「え、あ、えっと…だ、大丈夫…です。」

突然の美少年の登場に言葉が出なかった。
こんな涙、鼻水だらけの女の大丈夫なんて信用できるわけないってわかってはいたが大丈夫以外の言葉が出てこない。

「そんな顔で言われても説得力ないですよ。ほら、これで顔拭いてください」

ふわっと微笑む彼。

とても優しそうな人。

見惚れていた私は無意識にハンカチをもらっていた。

「えっ、いや、いいですいいです!!こんなきったない顔だし汚しちゃ悪いです!」

「そんなこと気にしないでくださいよ。でも元気そうでよかった。」

そんなことを言いながら彼は私の横に座った。

彼は制服を着ていた。
きっとおばあちゃんの葬式に来てくれたのだろう。

「あの、おばあちゃんのお葬式に来てくれたんですか?」

「そうです。小夜子さんと僕のおじいちゃんが関わりがあって。でもおじいちゃんあまり体調がよくないので代わりに僕が来たんです。」

「そうだったんですね。」

「おばあちゃんってことは小夜子さんのお孫さんですよね?確か…優香さん?」

「私のこと知ってるんですか!?」

勢いよく彼の方を見た。
彼はまた優しい微笑みをこちらに向けていた。

「小夜子さんいつも優香さんのお話をしていました。自慢の孫だって。」

その話を聞いてまた涙が出てきた。
そんなふうに誰かに話していたという事実があることがただただうれしかった。

「それと小夜子さん…」

「優香ー?」

彼がなにか言いかけた時お母さんの声が遠くから聞こえてきた。

「あ、そろそろ時間…」

「行きましょうか」

結局彼がなにを言いかけたのかわからなかった。