待ち合わせは15時50分、保健室の一番奥のベッド。

 私たちは横並びでベッドに座る。

 まずはじめに、私の右側にいる鳩井が眼鏡を外す。

 この時点で早くも心臓の音がおかしくなる。

 次に、鳩井が私の方に体を向けてコホンと小さく咳払いをすれば、


「……じゃあ」


 と、静かに言って、


「……う、うぃ」


 と、私も小さく返す。


 そして、鳩井が私の背中のすぐ横に左手をついて、ギシ、とスプリングが鳴る。

 同時に鳩井の骨ばった右手がそっと私の頬に添われると、私の心臓はマックス最高速度を記録する。