「……っ、う、うん……」


 僕をまっすぐ見返して頷いた波木さんは、自分からキスフレを提案したことを後悔してるのかいないのか、嬉しいのか切ないのか……わからない。

 なんとも複雑な顔で、やっぱり泣きそうにしてる。

 その顔がなぜかかわいく見えて、また喉の渇きを覚えた。



「……波木さん」



 僕は波木さんの手を引いた。



「わっ、え?は、鳩井……?」

「……」



 無垢な目を揺らして僕の前に立つ彼女がまた顔を赤く染めていく。

 僕はそんな彼女の小さな手を握ったまま見上げて、さらに赤くなっていく彼女の顔を眺める。



「……キスフレって」



 僕は、純粋な彼女の心を利用する、欲に溺れた悪魔だ。




「1日何回までだったらキスしていいの?」




 大切なものを大切にできない、最低最悪な、悪魔なんだ。