真面目な鳩井の、キスが甘い。

 私は、頭を抱えた。



 ――波木さんに恋、してるからだと思う



 ……そうだ

 付き合うことになったとき、キスがおいしく感じる理由を鳩井はそう言ってくれてた。


 
「そうだ、うん、こないだの台風の日だって熱い夜を過ごしたし、すっぴん可愛いって、彼シャツたまんないって言ってくれたし……」

「? なにブツブツ言ってんのよ日向」



 突然降って湧いた漠然とした不安を必死に追い払っていると、スマホがメッセージを受信した。


 【明日、保健室来れそう?】


 鳩井からの言葉が、急に、全部語尾に〝キスしたいから〟とつけられてるような気がしてきちゃって

 そんなわけないのに、これまで鳩井からもらったいろんな言葉も行動も全部、キス魔体質のおかげな気がしてきちゃって

 そんなゾッとすること考えちゃってる自分を追い払うように、頭をブンブンと横に振る。

 
 【行く!】


 泣きそうになりながら、送信する。


 
 ……怖い。

 もし鳩井がキス魔じゃなくなったら、なにかが変わっちゃいそうで。

 下手したら

 フラれちゃうかも とか