「鳩井!鳩井!もっと右!」

「うん」


 学校帰りの、夕方4時半。

 私たちは街中の一番大きなゲームセンターにいる。

 鳩井と私は今日、久しぶりにできた空き時間を使って寄り道デートのリベンジに来た。


「これ!これこれ!このゾウさんが欲しい!これ取れそう!」

「ん」


 鳩井、初めてのUFOキャッチャーに挑戦中。


「鳩井くん!その台アームが弱いから気をつけてー!」「タグ狙え!タグ!」


 私たちの後ろから聞こえてくる声援は、学校帰りの学生たち。

 私たちは今、ざっと見積もって30人ほどの学生たちに少し遠巻きからデートを見守られている。

 いわゆる野次馬さんだ。


「え!? タグ!? 鳩井! タグだって! タグ!」

「タグ……」


 鳩井が私にバシバシ叩かれながら恐る恐るボタンを押すと、アームがにゅにゅにゅ、とぬいぐるみたちの山を目掛けて足を広げた。