真面目な鳩井の、キスが甘い。

 キ……ンと、空気が凍る音がした。



 怒ってない。

 喜んでもいない。

 虚無の中にいる鳩井の言葉は、私の勇気を簡単にへし折った。



「……あ……あははー!ごめんごめん!なんか勘違い、かも?気にしないでー!」



 冷汗をピュンピュン飛ばしながらヘラヘラする私に、鳩井は相変わらず無表情で、尾道くんは申し訳なさそうに苦笑いを浮かべている。

 私はおずおずと前を向いて●ニョの演奏に戻った。


「どした」

 と、小声で美愛。

「どうもしなかったんです。穴があったら入りたいです」

 と、小声で答える。

「穴かぁ……うーん、リコーダーの穴はちっちゃいですねー」


 私が入る穴を探してくれる美愛の隣で、私は●ニョのBメロを吹きはじめる。