「やっだーもーお兄ちゃん、言ってくれればいいのに!」


 アースカラーを基調とした生活感あふれる部屋の中、鳩井のお母さんがど緊張の私の前に置いてくれたのは氷がカランと揺れる麦茶で、私が座っているのは鳩井家の食卓テーブルの椅子で。

 
 信じられないけど、波木日向16歳、ただいま鳩井さんのお宅にお邪魔しております。

 
「まさか音色の推しとクラスメイトで、しかもお付き合いしてただなんて!」

 
 鳩井のお母さんはお盆を置くと机を挟んで私の向かいに座り、私を見て興奮して都度、その隣に座るお父さんの肩をバシバシと叩いた。


「言っても信じなかったでしょ」


 もうすっかり顔色のいい鳩井が、そうぼやいてから麦茶に口をつけた。