真面目な鳩井の、キスが甘い。

 地平線から登りたての朝日をバックに、最高のロケーションで撮ったのは、ヒナのファースト写真集のため。

 私はだーさんやスタッフさん達と一緒に撮ったものを確認する。


「……うっ……うぅ……っ」

「え!?だーさん!?どうしたの!!」


 だーさんがかっぴらいた目からダバーッと涙を滝のように流している。
 
 
「あんたいつの間にっ、おっ、大人に、なってぇ……!」

「え……えぇ?」


 だーさんの言ってる意味が分からずオロオロしていると、三上さんが「ははっ」と笑う。

 
「わかる。ヒナちゃん大人っぽくなったよね」

 
 三上さんはモデルを始めた時から何かとお世話になってる、第二のお父さんみたいな人だ。

 顎にぎゅっと力を入れて泣き続けるだーさんに、三上さんは元々細い目をさらに細めて、穏やかに笑っている。

 
「えっ!そうかな!?」

「うん。ここ最近特にね。なんかあった?」

「嫌だわもぉー三上くん!彼氏できたからに決まってんでしょ!!」


 ドキッとして思わず背筋を伸ばす。

 
「さて、雑談はこの辺にして。写真とりあえずオッケーかな?」

「あっはい!とってもいい感じです!」
 
 
 そして早朝の海での撮影が終わり、着替えた私はロケバスに戻ると、さっそくスマホをチェックして一番に出てきた通知を見て、ホッと息をついた。