真面目な鳩井の、キスが甘い。

「鳩井!?」


 鳩井は横向きにベッドに倒れ込んで、顔を真っ赤にして息苦しそうにしている。

 冷や汗もすごい。


 うそ……!発作!?

 たった今キスしたばっかりなのに!!


 そこでちょうどガラガラッと扉が開いた。


「鳩井ー波木ーいるのかー? 入るぞー」


 鬼ちゃん!

 
「鬼ちゃん!!鳩井が大変なの!来て!!」


 カーテン越しに叫ぶと、驚いて駆けつけた鬼ちゃんが勢いよくカーテンを開く。


「どうした!?」

「鳩井が倒れちゃったの!でも今キスしたばっかりで…!」


 鬼ちゃんはゼェゼェと辛そうにする鳩井の顔を覗き込んで、鳩井の額に手を当てた。


「……これ、発作じゃねぇな」

「え!?」

「ガチ熱」

「ガチネツって!?」


 また聞いたことない病名だ、とテンパる私に、鬼ちゃんがひどく冷静に言った。


「キス魔とか関係ない、ガチの、お熱」


 

「…………オネツ?」



 フリーズする私に、鳩井が消え入りそうな小さな声で「……ごめん」と呟いた。