私に気付いた街の人たちの声は歩くごとに大きくなっていって、しまいには複数の人たちにスマホを向けられて写真、動画を撮られる始末。

 それでも鳩井は構わず前を向いたまま、堂々と突き進んでいく。

 無遠慮な人たちに、見られ慣れてるはずの私の方がちょっと怖くなるくらいで。

 つい繋いだ手に力を入れてしまうと、鳩井が道の端にズレて足を止めた。

 もちろん、ついてきた人たちも足を止めてここぞとばかりにスマホを向けるけど、鳩井は気にせず振り向いた。




「大切にする」




 向けられる綺麗すぎる切れ長の目に、いつの間にかオレンジになっていた空が映りこんで優しく煌めいたから



「波木さんのこと。なにより大切にするから」



 吸い込まれそうに目を奪われた。



「だからもう、大丈夫」


 
 キャーキャーと周囲がお祭り騒ぎになる中で、ぎゅっと握られた手から、鳩井の強い覚悟が伝わってくる。



「こっちに寄せようとしなくていい。波木さんは波木さんらしく、自由に、素直でいて」