真面目な鳩井の、キスが甘い。

「そう言えばヒナちゃん〝鳩井〟って呼んでるけど、それ苗字だよね?鳩井くんはヒナちゃんのこと、なんて呼んでるの?」


 カメラマンさんがシャッターを切りながらおもむろに聞いて「波木さん、です」と鳩井が小さく答える。


「へー!ヒナちゃんを苗字呼び!逆に新鮮だね。名前で呼びあわないの?」


 カメラマンさんの素朴な疑問にドキッとする。

 考えたこともなかった。

 鳩井の、名前……


「……和音(かずね)、くん?」


 さっそく口に出してみた。





「……」



 
「……」

 


「……」




 永遠にリアクションがない。



 
「……おーい」


 私は鳩井の顔の前で手をヒラヒラさせて意識を確認する。


「……はい」


 意識あった。よかった。