真面目な鳩井の、キスが甘い。

 そのとき、遠くの方から「ヒナー」と呼ぶ声がした。



「あっ、だーさんおはー……」

「ッキャーーーー!!」


 だーさんが私の挨拶を遮って悲鳴をあげた。

 ビクッとした鳩井目掛けて、だーさんがものすごい勢いで突進してくる。


「いやぁーん!!あなたが鳩井くん!?えー!!やぁーだぁー地味!!可愛い!!え!?よく見たら綺麗な顔してるじゃない、やぁーだぁー可愛いーーー!!」


 その圧に押されて声も出せずに後ずさる鳩井を、だーさんは構わず四方八方から観察してキャーキャーする。


「あなたそんな恵まれた容姿でなんでそんな地味なの!?逆に天才よ!?えー体ほっそぉ~い!細身のスキニーきっと似合うわね!あーんカップル特集だけなんてもったいない!はーやだわ、衣装のみきちゃんにはやく見せてあげたい!もう連れてっちゃおうかしら!?いいわよね!?こっちいらっしゃい鳩井くん!」


 鳩井の助けを求める目に応える前に、鳩井はだーさんに抱えられて衣裳部屋の方へと消えていってしまった。

 ……うん、なんとなくこうなる気はしてたんだよねー。