真面目な鳩井の、キスが甘い。

 そのとき、私のスカートのポケットにあるスマホが振動した。


「あ、だーさんだ」


 マネージャーのだーさんからメッセージ。なんだろー……


「ぶぇええええ!?」

 
 私の奇声に鬼ちゃんと鳩井がビクッとする。


「なんだよ、どうした波木」

「えいっ、えいっ、えいが……!」

「えいが?」

「映画出演が!決まったって……!!」


 私は目を丸くする二人にスマホ画面をずずいっと見せつける。

 こないだ、受けるだけ受けてみな~と言われて参加した青春映画のヒロインオーディション。

 まさかの準主役に抜擢されたとの連絡だった。


「え!?大日方監督の作品じゃねぇか!すげーじゃん!」

「そうだよね!?凄いよねこれ!?」

「すげぇよ!おめでとう!あ~今日はダブルでパーッとお祝いだな!ケーキ買ってくるわ!」

「え!?やったぁ!!」


 目を輝かせた鬼ちゃんが白衣を脱ぎ捨てて保健室を飛び出した。

 多分鬼ちゃんは本来の職務を忘れてる。

 それもこれも保健室が過疎りすぎてるせいだ。