「ん、は、鳩……鳩井…っ」


 束の間の休息に、鳩井のシャツを引っ張って涙目で訴える。

 多分わたし、人様に見せられないような、すっごい顔してる。

 もう、もうご勘弁ください……!!


「……ん」


 伝わったのか、薄く目を開けた鳩井が力を緩めて唇を離した。


「ん、はぁ、はぁ……っ」


 うまく息ができなかったせいで、息が乱れる。

 鳩井は、そんな私の頬を両手で包んだままおでこにコツンと自分のそれをあわせて、ため息交じりに呟いた。


「あー、凄い……みなぎった」


 目を閉じる鳩井の仕草に、胸をギュッと鷲掴みにされる。


「鳩井……なんか、それ、」


 彼氏みたいじゃない…?


 …とは言えずに、ただ見返すことしかできない私に鳩井は、

 ちう、とダメ押しの軽いキスをした。


「!」

「ごちそうさま」

「え、あ、」


 そして顔色が良さそうな鳩井は、私の返事を待たずに手を離した。


「絶対勝つから」

「…!」


 鳩井はそう言い残して扉をひらくと、駆け足で社会科準備室から出ていく。



「…………」



 どうやら、



「ちょ……っとぉー……っ」



 補給された。



 一人ぼっちになった社会科準備室。

 腰が抜けた私はぺたんとその場に崩れ落ちて、なかなか冷めない顔を押さえたまま、しばらくそこから動くことができなかった。