いつの間にかゴリさんのディフェンスに入っていた、ゴリさんより頭三つ分は小さな鳩井。


「くっ」


 不意打ちでバランスを崩したらしいゴリさんのシュートは、軌道がズレてリングに当たって跳ねた。


「!!」


 そしてそのボールは素早くポジション取りしていた晴翔の元へと渡った。

 晴翔はそのまま凄い速さでゴールポストに向かう。


 うっわぁぁぁ鳩井ナイスディフェンスゥ!!

 凄い凄い鳩井!練習の成果かな!?

 行け!晴翔、点とっちゃえ!!



 鳩井のナイスプレーに体育館がどよめく中、晴翔を追いかけてノアチームがすかさずディフェンスに入る。


「絶対入れさせんなよ!!」


 ノアたちが追い付く前に晴翔はすかさずシュート……

 と見せかけて、またパスを出した。


「!?」


 それを受け取ったのは、



 ──……鳩井。




 え?鳩井?




 見ていた観客全員、ハッと息を吞んだ。

 だって鳩井が立ってるのは、ゴールから一番遠いツーポイントラインの、後ろ。

 鳩井は一人静かに、少し遠いゴールを見つめてシュートモーションに入る。

 その姿が、公園で見た鳩井の姿と重なった。


「行け!鳩井!」


 晴翔の声が響いた。


 無理だろって誰かの声がする。


 そして鳩井は、やたら綺麗なフォームでシュートを放った。




 わ、わ…っ




 きれいな放物線を描いてみんなの頭上を飛んでいくボールは、



 ……パスッ。



 小気味いい音とともに、バスケットゴールを揺らした。



「……」



 ……鳩井が、華麗に2ポイントを決めた。


 その時体育館は、ボールがゴール下でテンテン…と床を跳ねる音だけが響き渡るほど、静寂に包まれていた。


 「……え?」という誰かの声が、どこからかした。