木曜日は立ち入り禁止。

確かに褒めまくっていた記憶。

あの頃の藤くんはすごく可愛かった。

「あの頃の大塚は、俺とも崚ともかなり近くで接してたよね。何でダメになっちゃったの?」

どくんっ

心臓が嫌な感覚になった。

踏み込まれたら、終わりだ。
このことを知られてしまったらきっと
みんなと仲良くいられない。

私はずっとそう思って生きていたから

言葉が、出なくなった。

「……大塚?」
「…特に、理由はないよ?大人になったんだよ、私たち」
「そう?そういうものか…」

歯切れの悪い返事をしながらうーんと考え込む藤くんに
また少し、悪いなと思ってしまった。

いつかみんなにも話せたらいいんだけどな。

「そろそろ、帰る?」

そう言われて気づいた。
もう外は暗くなっていた。時計を見ると18時半を超えていた。

「えっ、もうこんな時間?」
「思ったより時間かかっちゃったね」

どうしよう、この時間帯のバスって来るの遅いんだよなぁ…。
スマホで時刻表を検索すると、次にくるバスは19時半。1時間もある…!

「どうしよう…。」

美術室は18時45分には閉まっちゃうから、真っ暗なバス停で待つ時間は実質45分といったところ。

「どうしたの?バスの時間?」
「うん、ちょっと遅くて」

スマホを覗き込んだ藤くんは少し考え込んで、閃いたというような顔をした。

「俺の自転車乗って帰る?」

後ろに、と藤くんは鍵を取り出した。

「えっ、2人乗り?!」
「うん、どうせ駅までの通学路は暗いし人通り少ないから、見られてバレる心配無いし」
「えぇ…」

確かにこの時間帯は先生の見回りも少ないけど…。

「決まり。行くぞ」
「えちょっと」

藤くんは私の手を引いて駐輪場に走った。