木曜日は立ち入り禁止。

「俺はもっと大塚と話したいし、もっと大塚に触れたいし、自分がやりたいからやってるの。別に迷惑じゃないよ」
「でも……」
「でも、じゃないの。迷惑に思ってるとか、苦手克服手伝わせてるとか、俺の事勝手に決めないで」

俺がやりたくてやってるだけだから。と
藤くんはギュッと私の右手を握る。

「わかった?」
「…うん、ごめん」
「ごめんじゃないでしょ?」
「……ありがと」

藤くんは満足したように席を立って
お向かいから私の隣に移動してきて

さっきまで描いていたスケッチを見せてくれた。

「わっ……凄い、綺麗」

あまりの出来と繊細さに、私は心を奪われそうになった。

鉛筆特有の掠れた感じが、肌の質感をバランスよく上手く表現している。
細い線で描かれた爪の隙間や指先は、モデルは本当に私の手なのか疑うほど綺麗だった。

自分の手と見比べてみると、それは本当によく似ていた。
いや、美化もされているんだろうけれど。

それでも彼自身はまだ納得していない様子だった。

「……藤くん凄いよ!こんなに繊細な絵が描けるなんて、ほんとに凄い」
「ありがとう。でも何かが違うんだよ、納得いかない…。何が違うんだろう」

これで納得がいかないっていうのも、ストイックで凄い。

凄いしか言えない私を見て、彼はふわっと笑った。

「大塚って本当に変わんないな。興奮すると語彙力無くなっちゃうところとか、すごく褒めてくれるところとか」
「えっ、そ、そうかな」

私、変わってないかな。

「もちろんいい意味で。小学生の時も、俺の事すっごい褒めてくれてたんだよ」

覚えてないの?と微笑みかける藤くんは
何だかすごくかっこよくて

私は思わずぱっと下を向いてしまった。

「大塚?」
「お、覚えてるよ」

凄く焦ったけど、覚えているのは本当。
小さい頃、たくさん助けてくれてたくさん教えてくれて