|《付き合って》


朝、目が覚めて時計を見るといつもより少し早い時間だった。

カーテンを開けて陽の光を浴びると、なんだか特別な何かが待ってるんじゃないかなって思えて、私は伸びをした。

リビングで朝食を済ませて、制服に着替えて、髪を結って、鞄を持って家を出る。
いつもと変わらない道、いつもと変わらない駅といつもと変わらないコンビニ、いつもと変わらない店員さん。

「…今日も、大丈夫」

普通の日常。

私は足取り軽やかに学校に向かった。



「ちょっと聞いてよ美空琉(みくる)〜、佐藤くんってば毎回LINEの返信遅いんだけど、脈ナシなのかなぁ」

席に着くなり後ろから抱きついてきたのは赤茶の髪をクルクルして下ろしている女の子、今年2年に上がってから同じクラスになって仲良くなった五井りつ(りっちゃん)。

「おはよ、りっちゃん。昨日もずっと佐藤くんとLINEしてたの?」

ふふっと笑って話を聞く。りっちゃんは今、佐藤くんにゾッコンなのだ。

「もーー、みくるは佐藤くんと中学一緒だったんでしょ?いいなぁー」

むっとした顔で私に抱きつくりっちゃんから、いつもの香水の香りがふわんっと漂う。

りっちゃんは可愛いなぁ。いつも楽しそうに過ごしてて、自分の気持ちを大事にして恋だってしてる。

「こら、りつ。みくるが困っちゃうでしょ、離れなさい」
「えぇー、なんでよ」

ブラウンのさらさらのロングヘアをかきあげながら切れ長の目でりっちゃんを見つめるのは、1年の頃から仲のいい九条成星(なるせ)こと、なーさん。

「おはよ、なーさん。」

ひらひらと手を振ると、なーさんはポケットからチョコを取り出して1つずつ私達にくれた。

「えっ!!いいのなーさん!!やばい感謝!」
「おいしそー!ありがとね、なーさん」

いいえ、とでも言うかのように、なーさんは私達ふたりの頭をぽんぽんと撫でた。