「分かった。初音に話をしてみてから遠慮なく伺わせてもらう」

兄が瑛ちゃんに対して返事をする。

「是非そうして」

瑛ちゃんはすかさず病院に電話をして、産婦人科の当番医の確認とベッドの空きを確認していた。脱水症状も起こしているかもしれないので早めの方が良いとの事で、初音さんを説得して、兄と私と瑛ちゃんの三人で初音さんを病院に連れて行く。

産婦人科の休日当番医は私と初音さんの担当医でもある二宮先生だったので、ホッと胸を撫で下ろした。鷹司記念病院の先生方のレベルは高いのは承知だが、信頼出来る二宮先生ならば尚更、安心出来る。

「やっぱり、初音さんは脱水症状起こしてたわね。鷹司が直ぐに気づいて良かった」

入院手続きをしていた時に二宮先生が私達の元に現れた。

「気になって初音さんを観察していた所、水分をとらなきゃと思って水を口に含んだ後にトイレに直行していたみたいだったから、もしかしたら……と思ってな」

「あら、初音さんの診断は冷静にするのね。自分の奥様の時は検査薬もしないで病院に飛び込んで来たくせにね」

淡々と会話をしていた瑛ちゃんを遮るように、二宮先生はわざとからかうように言ってニヤニヤしている。

「二宮、その事は忘れてくれ。次からはちゃんと検査薬使うから」

瑛ちゃんが照れながら抗議をしていると、兄が話を知りたそうに「え? 瑛大が取り乱した話なら聞きたい」と食いついてくる。二宮先生も瑛ちゃんをからかうのが上手なようで、終始ニヤニヤしながら話をしていた。

年代が近いせいか、三人は気が合うらしい。私は三人の話をにこにこしながら聞いていた。