──いつの間にか寝てしまったらしく、目が覚めると見知らぬ風景がそこにはあった。

瑛ちゃんのマンションでもないし、何処なのだろう?

肝心の瑛ちゃんも見当たらないが、シャワーの音が聞こえる気がする。ベッドの上に座り、目の前に広がる夜景を見渡す。

先程の夜景よりも、もっと上から見下ろしている感じがする。ベッドも広くて、シングルベッドが二つ分位はありそうだった。

カチャリ、と音が聞こえて、バスルームから瑛ちゃんが出てきた。バスローブ姿で髪の毛が濡れている。

「大丈夫? 体調悪くない?」

「……大丈夫。眠かっただけ。今はスッキリしたよ」

私の隣に座って、私を診察するように質問をする瑛ちゃん。

「それは妊娠によるホルモンバランスの変化からくるものです。ひとまず水分とって、浴びれそうならシャワーどうぞ」

「あはは、瑛ちゃん、病院の先生みたい」

「……こう見えても本物の先生ですから」

瑛ちゃんは苦笑いをしながら、ミネラルウォーターのペットボトルを手渡した。

「ここ、どこ?」

「ホテルの部屋だよ。会計を済ませている間に陽菜乃が寝てしまって自宅に帰れないから、部屋を取ったんだ。空いてて良かった」

子供みたいに食べながら眠いとは思っていた。必死に眠気に耐えていたけれど、瑛ちゃんがお店の方と会話したり、会計している間に隣に座っていた私は寝てしまっていたらしい。

席に会計の金額を提示しに来た店員さんが私を気にかけてくれて、その間にホテルの手配をしてくれたとか。

瑛ちゃんにもお店にも迷惑かけてしまったなぁ……。

「ご、……ごめんなさい!迷惑かけちゃって!」

「んー? そんな事ないよ。陽菜乃とのデート、楽しかったよ」

瑛ちゃんは笑いながら濡れた髪を拭いているけれど、良くよく周りを見渡したら、やたら広い部屋にソファーもあるし、高級な部屋に違いない気がしてきて身震いをした。