結婚の報告をしに瑛ちゃんの実家に伺った際、一番に喜んでくれたのは瑛ちゃんのお祖母様だった。

瑛ちゃんのお祖母様は何年か前に40年以上連れ添った旦那様を亡くし、しばらくは意気消沈していた。

元気を出してもらう為にと瑛ちゃんのお母様から和菓子の注文があり、何度もお祖母様の元へと配達もした。配達をしている内にお祖母様ともすっかり仲良くなり、旦那様との馴れ初めを聞いたり、瑛ちゃんの小さな頃の思い出も教えてもらい心が暖かくなったのをついこないだの様に思い出せる。

そんなこんなで昼間は新作の和菓子の評論会をしたり、他店の新作の和菓子の評論会を目的としたお茶会が開かれている。目的と称し、ただ単に御三方がお茶会を開きたいだけでもある……。

「お料理教室なら、千紗子さんのお知り合いの方が開かれている所はどうかしら? お若い料理研究家の方が開かれているのだけれど、単発で開かれていたお菓子講座の時は楽しかったわよ」

主人を亡くしてからは塞ぎ込まないようにって、色々とチャレンジする様にしてるの。千紗子さんと相談しながら、色々な講座に顔を出してるのよ」

「そうでしたの! 陽菜乃、千紗子さんにお願いして、そちらに通わせて頂いたら?」

御三方が話をしている間、私はお茶のおかわりを準備していた。母の一言で私に皆の視線が一気に集中して、急須にお湯を注ぐ手が震えた。

「あ、えと……、はい。是非、宜しくお願い致します」としどろもどろになりながら返事をする。

失敗してはいけない、と緊張感が異常に高まる。そんなガチガチな私に気付いて、瑛ちゃんのお母様が私に近寄って来た。