望月先生は私を見てニヤつきながら、
「普段は瑛ちゃんって呼んでるの?」
と指摘してきた。

結婚するまでは瑛ちゃんとしか呼んだ事がないから、今だに人前でも途中まで、いつもの呼び名で呼んでしまうのだ。

「……はい。幼い頃からそう呼んでるので、もう癖になっているんですよね」

「そっか、そっか。仲が宜しい事で。……まだ手術がかかりそうだから、探検しよっか?」

ホットサンドイッチを食べ終わり、腕時計を見た望月先生が提案してくれたのだが、私は申し訳なさを感じてしまう。望月先生だって忙しいのに。

「望月先生もお忙しいですから、無理せずに大丈夫です」

「鷹司からよろしくって頼まれてるから、気にしないでね。それに私は今日の午後は空いてるからさ。だから、お嫁ちゃんは私に着いてきてね」

「そうなんですね……。御迷惑おかけしますが、宜しくお願い致します」

「オッケー、行こう。もっと肩の力を抜いて大丈夫だよ」

立ち上がると私の背中をバンバンと叩く。叩かれた背中がヒリヒリと痛い。結構、力が入ってたなぁ……。

望月先生が連れて来てくれたのは産婦人科だった。何故、ここをチョイスしたの?

「おつかれー。二宮ちゃん、居る? あー、いた居た! この子、鷹司のお嫁ちゃんです。特別室見せてもらって良い?」

「初めまして、産婦人科医の二宮です。鷹司が戻り次第、一緒に話を聞きますね。特別室は7002が一部屋空いてるからどうぞー」

「ありがとー。行くよ、お嫁ちゃん」

産婦人科の先生が一緒に話を聞くの? 何故?

もしかしたら、このムカムカの正体は妊娠したのかな? 私がママになるの?

頭の中を想像が駆け巡る。

けれども、瑛ちゃんはそんな事を一言も言ってなかった。妊娠の可能性があるならば、検査薬で調べてみるとか、方法はあったはずなのに。