外に出ると今日はとてもよく晴れた日で暑いくらいだ。梅雨の中休みか、上着が要らない位な陽気だった。

マンションの前に白のリムジンが停車していた。何だろう?と思い、「瑛ちゃん、こっちから行こう」と言ったら急にドアが開き、黒いスーツの男性が降りてきた。

「こちらにお乗り下さい」

「……え?」

突然の事にパニックになりながらもリムジンの中に乗せられた。車内は広々としていて、座席には瑛ちゃんと二人きりだった。

座席の半分にはハート型の風船が沢山敷き詰めてあり、今すぐにでもパーティーを出来るかの様なグラスや飲み物が用意されていた。まだ午後の13時くらいだと言うのに車内は薄暗く、ブルーライトの光だけだった。窓にスモークが張ってあるのかな?

「瑛ちゃん、これは一体……? 私達は途中まで電車で乗り継いで、水上バスでお台場に行くんだよね?」

絶対におかしいし怪しいと思いつつも、念の為に確認する。

「うーん、……お台場には行くんだけど、その前に寄り道させてくれる?」

瑛ちゃんは少し困り顔で答えた。

「寄り道? リムジンで寄り道なの?」

「そうだよ。俺の我儘、聞いてくれる?」

「よく分からないけど、瑛ちゃんの為なら聞いちゃうよ」

状況が全く把握出来てないのだが、瑛ちゃんを信じる。

「シャンパン飲む? ノンアルにする?」

「お酒は夜にとって置こうかな? また酔って迷惑をかけたくないから……」

「あの日の陽菜乃も可愛かったよ。あれ以来、一緒に飲んでないから夜に一緒に飲もうね」

「もう、あの日の事は忘れて下さい……」

瑛ちゃんは肩を震わせ、笑いを堪えている。瑛ちゃんと一緒に初めて二人でお酒を交わした夜に私は酔ってしまい、瑛ちゃんにベッタリくっついて離れなかったらしい。私の失態である。