「瑛ちゃん、良くも懲りずにまぁ、毎日の様に買いに来ますよね。甘い物なら、たまには他のテナントに売っているケーキでも買ってみたら良いのに」

私は瑛ちゃんを見ながら、初音さんに問いかける。

「そうね、たまにはケーキも良いわよね。でも、高雅さんの和菓子を食べると疲れが吹き飛ぶし、幸せな気持ちになれるのよ」

「お惚気けですね、初音さん。お兄にこんな素敵なお嫁さんが来るなんて夢の様です。しかも、私の義理のお姉さんですしね」

「まぁ、何て嬉しい事を!」

初音さんが兄の事を話す時は、尊敬の念を表し、そして穏やかな表情ながらも少し照れている様にも見える。兄は本当に愛されていると確信する。

「陽菜乃、生菓子の練り切りを今日は持ち帰り用に3つ包んで。それから、テイクアウト用の抹茶ラテを2つ」

「はい、直ぐにお包みします」

もっと気軽に和菓子や生菓子を楽しんで頂く為に、兄の提案でイートインスペースも設けてあり、召し上がる際には高級茶葉の入れたてのお茶もサービスしている。抹茶ラテやお茶のテイクアウトも出来る。

私は手早くテイクアウトの準備をして、瑛ちゃんに手渡した。

「今の時間は忙しくなさそうだから、陽菜乃を借りても良いですよね、初音さん?」

「えぇ、大丈夫ですよ。ごゆっくりどうぞ~」

二人はぎこちない様な笑顔を浮かべて会話をしている。

「え?、ちょ、待って……」

私の意見など聞く耳を持っていないらしく、瑛ちゃんに誘われるままに手を引かれて、店を後にした。