「改めて、結婚して頂けますか?」

「……はい、勿論」

目の前に座っている瑛ちゃんが優しく微笑んでいる。

「本当はあの日に渡す予定だったんだけど、渡せなくなってしまって、遅くなったけど受け取って下さい」

スイーツの三段タワーに紛れていたのは、ロイヤルブルーの箱に入った婚約指輪だった。私が婚約指輪に気付いたタイミングで、瑛ちゃんに再びプロポーズをされた。サプライズの連続に私は息を飲む。

「ありがと……ござ、います。嬉しくて……どうしよう……!」

私の左手を瑛ちゃんの左手の上に乗せられる。差し出した左手の薬指にゆっくりと婚約指輪がはめられる。目に涙が滲んで瑛ちゃんの顔がまともに見れない。

「良かった、ピッタリだ。初音さんに感謝だな!」

「は、つね……さんに?」

「陽菜乃が居ない時、初音さんに左手の薬指のサイズを測ってとお願いしといた。何となくサイズは分かってたけど、正確に知りたかったから。お願いして良かった」

「……今思えば、お店が暇な時に、初音さんに結婚指輪はこうやってセンチを測るのよって、細い紙で巻かれたのを思い出したよ」

結婚と言うものに興味津々だった私は、深く考えずに初音さんの話を聞いていた。そう言えば、あの細い紙の行方は気にしなかったな。

だから、瑛ちゃんと初音さんは余り、馴染みが無いはずなのに仲が良く見えたんだ。

「初音さんに声をかけてたら、あの後、高雅に睨まれたけどな。報告するまでは高雅にも内緒で頼む、って言ってあったからコソコソしてた様に感じたのかもしれないな……って、陽菜乃、泣き過ぎだから……!」

だって、だって……、こんなに嬉しいサプライズの連続に嬉し涙が出ない訳が無い。

「これからもずっと一緒に居て下さい」

「はい……」

瑛ちゃんが持っていたハンカチで涙を拭かれる。

「泣いてないで食べよ?」と言われて、ケーキを一口大に切って、口の中に入れられた。

「美味しぃ」

瑛ちゃんも幸せそうな顔をしてケーキを頬張る。

この幸せがいつまでも続きますように──