瑛ちゃんにプロポーズをされてから三日が経った。日本庭園でのプロポーズは夢ではなく、本当の出来事だった。

今までは仕事帰りに二人きりで会ったりする事は無かったのだが、瑛ちゃんはたったの五分間だけでも私が眠りにつく時間までには隙間時間で会いに来てくれる。『陽菜乃と二人きりの時間を大切にしなくちゃね』と言って、自宅前まで来てくれたり、仕事帰りに合わせて来てくれたり。

「高雅、俺と陽菜乃は結婚するからな」

「………おい、ちょっと待て! 結婚するって何だ?」

「言葉の通りだよ。親友のお前には真っ先に報告しただけだ。よろしくね、お義兄様」

兄と瑛ちゃんの仕事の合間を縫って、ショッピングモール内のカフェにて兄への結婚報告中。

兄は突然の事に驚いている様子だったが、

「陽菜乃が瑛大を選んだなら仕方ない。瑛大、陽菜乃を大切にしなかったら許さないからな」

と言いながら睨み付けた。

今にも首元に掴みかかりそうな迫力の兄を初めて見た。いつもは常に穏やかな兄だが、妹想いの兄だからこそ、平常心では居られなかったのかもしれない。

瑛ちゃんも売り言葉に買い言葉みたいに……、

「そんなの、当たり前だろ! シスコンのお前が羨むくらいに陽菜乃を大切にして、そして幸せにするからな」

と返していた。

その後、兄と瑛ちゃんは二人で笑いあっていた。お互いに信用してるからこそ通じ合えるものがある。兄に認められた事で、結婚までの第一歩を踏み出す事が出来た。

「二人はいつから付き合ってたの? 連絡を取り合っていたのは知っていたけど、付き合っていたのは知らなかったよ」

兄も疑問に思っていたらしい。結婚するとなれば、事前に付き合っていたと思うのが主だが、私達は付き合っていなかった、と言う答えが正解だったりもする……。