その日以降俺は先輩を無意識に探すようになっていた。

移動教室で先輩のクラスの前を通ることもあるが双子の人と他男子三人がよく遊びに行っているみたいだった。

「はぁ。いいなー」

ため息を吐きそう呟いた。それを聞いた陸はどうしたのかと前の席に座った。

陸は後に一緒にバスケ部に入る人だ。

「ため息つくなんて珍しいじゃん。どうしたのー?」

陸とは小学生の頃からの付き合いで俺のことを俺以上に知っているんじゃないかっていうくらい知っている。

「んー。どうしたらいいかわかんなくて」

うぅ。と手で顔を覆った。

「蒼が悩み事をしてるって…今日雨でも降るのかな」

俺は考えるより先に体が動くタイプなので悩む前に動いている。性格的にもだが悩むことは滅多にない。

「ねー接点ない人にどうやって話しかければいいの?」

そう言うと陸は少し驚いた顔をした。

「お前が話しかけられない人ってどんな人だよ。誰にでも話しかけれるのに…。もしかして恋でもしたか?」

詳しいことも言ってないのに悩み事を当てるとはさすがだ。

「…うん。一目惚れした」

「マジか…。恋愛に興味なかった奴がまさかの一目惚れか。相手は?」

「…二年の双子の先輩」

恋バナをするのは初めてなので少し照れくさい。

「あーそれはさすがに話しかけづらいな。周りの人達がすごい囲ってるもんな」

そう。あの四人がお姫様のように囲っている。絃羽先輩の友達がいない時は、基本ずっと一緒にいるみたいだしとてもじゃないが話しかけれない。

しかも恋が初めての俺はどういけばいいのかわからない。

黙っていると思い出したというように陸がまた話し始めた。

「そういえば絃羽先輩ってバスケ部のマネージャーらしいよ」

「…え!?そうなの!」

「弟の湊先輩がバスケ部でそれでやってるんじゃないかな?俺達も入るんだから接点作れるよ」

「まああの先輩方もいるけどね」

陸は頑張れよ。と言って微笑んだ。昼休み終了のチャイムが鳴った。