事情を知っている母も
『荒れなくなったんだから半袖着ていけばいいのに』
と能天気に言ってくることに無性に腹が立った
いつしか、長袖は私を守る壁になっていったのだ
「漣さん!!」
私を呼ぶ声が聞こえて振り返ると、汗を流しながらこっちに走ってくる頼くんの姿があった
「頼くん。なんで…」
「…はぁはぁ。秋斗のせいでごめん。あいつ思ったことすぐ口に出すから」
「もしかして、それ言いにくるためだけにわざわざ走ってきてくれたの…?」
「うん。何か事情があるんだろうけど、それに土足で入るようなまねしちゃったから。」
初めてだった
ただの寒さ対策とか長袖が好きとかそんな理由じゃなくて
何か事情があると最初から考えてくれた人は
「ありがとう頼くん。ああやって言われるのは慣れてるから、大丈夫だよ。」
「……無理して笑わなくていいよ。」
えっ?
「本当は言われたくも慣れたくもないんでしょ?秋斗が最初に聞いた時も、暑いでしょって聞いた時も。漣さん、ずっとしんどそうだった。」
「頼くん……。」

