カーテンから明るい日の光が入ってくる誰もいない空き教室で、楠本 夏樹 はいつものようにSNSを見ていた。そんな隣に座る彼女の友人の、斎藤 夢 はスマホ片手に唸っている。

「うーん。最近、動画伸び悩んでるね」

ユメの悩みの種は最近、夏樹の動画チャンネルの視聴率が伸び悩んでいる事だった。
夏樹が中学1年生の頃に趣味で始めたダンスカバーの動画は直ぐに伸び、夏樹の動画撮影を手伝っていたユメもその反響に喜んだ。
中学生に始めた動画の投稿も、高校2年生となってファンやメディアからは動画投稿サイトの、不動の人気ダンサーとして紹介される程だが、それが最近伸び悩んでいるのだ。

「そうかな?基本的に70万再生もされてるし、そんなに視聴されてない内に入る?」

「いいや、油断しちゃだめだよ!前は動画が投稿されれば、100万再生なんて当たり前だったし。それに、今投稿している作品の中で1番伸びてる動画は、もうすぐで1000万再生になるんだよ!?」

ここで中途半端に続けちゃダメだと、ユメは言った。
しかし、とうの本人が全く向上心がない。
ユメは、どうしたもんかと頭を抱える。

今、ユメと夏樹がいるのは高校の教室だ。
夏樹もユメも通信制の高校に通っており、普通の高校生よりも自分に使える時間が多い。
大手の動画投稿サイト『ベリーファンタジア』で、ダンスカバーの動画が伸びていわゆる有名人になった夏樹は、目立つのを避けて通信制の高校を選んだのだった。

夏樹はSNSで自分の動画に対する批判を見て、ここらで幕引き終了かと考えを巡らせる。