ＢＡＬには時々、詩月の父親「周桜宗月」がマネジャーや、詩月の師匠をしている友人などと顔を出す。

最初の頃には宗月を避けていた詩月も、宗月と演奏することが徐々に増えた。

宗月と詩月が競うように演奏すると、ＢＡＬはさながらコンサート会場と化した。

宗月の演奏に食らいつく詩月の演奏、それを受け止めつつも弾いているうち、負けまいと熱がこもっていく宗月の演奏に、聴いている方も熱くなった。

ＢＡＬではもう誰も、詩月を周桜宗月Ｊｒ．とは呼ばない。

巷ではエリザベートコンクールのヴァイオリン部門後、詩月はヴァイオリニスト周桜詩月として名を馳せている。

留学当初から変わらず街頭演奏を続けている詩月は「ケルントナー通りのヴァイオリン王子」としても有名だ。

オーケストラとの共演に加え、単独コンサートなど人気も上々だ。

街頭演奏の締めに演奏する曲は、決まっている。